アルファ・プラスアルファ

デジタルカメラ(α7C II, α7R IV, α900, etc)とフィルムカメラで撮ってます

Minolta-35 I型

レンズ交換式レンジファインダーカメラ Minolta-35の紹介です。第二次世界大戦GHQ占領下で、千代田光学精工が主に輸出向けとして開発したバルナックライカコピーのひとつです。Minolta-35は I型、Ⅱ型、ⅡB型と大きくわけて3つに分類され、 1947年発売のI型から1958年発売のⅡB型まで約10年間、改良が続けられました。 I型は最もバリエーションが多く、IA(1947年)、IB(1948年)、IC(1949年)、ID(1950年)、IE(1951年)、IF(1952年)の6つに分類されています。Ⅱ型(1953年)はバリエーションが2つあり前期型(1953年)と後期型(1955年)に分けられます。最終型のⅡB型はバリエーションはありません。

私が購入したものはMinolta-35 IBになります。

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名称:Minolta-35
シャッター:横走り布幕 フォーカルプレーンシャッター
シャッタースピード:B ~ 1/500
ファインダー倍率:0.33倍
基線長:40mm(有効基線長:13.2mm)
フレーム:45mm(全視野、アスペクト比4:3)
マウント:Lマウント
重量:585g(実測値)
サイズ:137 x 76 x 40 (W x H x D, 実測値)
発売日:1948年

ボディの質感はかなり良いです。1957年発売の高級機とされるMINOLTA SUPER Aよりも質感は上です。戦前戦後、他のメーカーがライカコピーを作り、見た目も仕様もバルナックライカに近いものにしていたのに対し、Minolta-35は外観だけでなく機能的にもオリジナリティがあふれていました。まず、バルナックライカにはピント合わせのファインダーとフレーミングのファインダーの2つのファインダーがありますが、Minolta-35は(今のカメラではあたりまえですが)一つのファインダーでピント合わせとフレーミングを行えるようになっていて、素早く写真を撮れるようになっています(1954年発売の最初のM型ライカM3ではそのようになっている)。

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もう一つは、フィルムの装填部分です。ライカは裏蓋を完全に分離させたのち、フィルムを縦に差し込むようにいれるため装填が難しいですが、Minolta-35はその後一般的となる方式と同じく、蝶番で留められた軸を中心に扉のように開くようになっていて、フィルムの装填がライカより簡単になっています(上の写真)。

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一コマの横幅が通常のライカ判より短く、コマの間隔も狭い

Minolta-35 IAとIBの珍しい特徴は一コマのサイズが24 x 32 mm(一般的に使用されているサイズは24 x 36 mm、ライカ判とも呼ばれる)、つまり、写真のアスペクト比が4:3だということです。36枚撮りフィルムだと横幅が短くなるため40枚ほど撮ることができます。このサイズはニホン判と呼ばれています。ニホン判はライカ判に比べ撮影枚数が多いことと、六切りや四切りでプリントしたときに削ぎ落とされる部分が少なくて無駄がないというメリットがありましたが、GHQ占領下の戦後3年目、主要な供給先は海外(米国)であり、米国ではライカ判が主流だったため、米国への輸出認可が得られず改良を求められたようです。IC型からは輸出できるように改良した(おそらくコマの間隔をライカ判と同じにした)ようですが、写真のサイズは24 x 33.5 mmとすこしだけ横に伸びただけでライカ判にはできず、最終型 IIBでようやくライカ判となりました。

調べた限り、ニホン判のカメラはあまり多くありません。1947年にMinolta-35、1948年にNikon I型(ニコン最初のカメラ)、ミニヨン35B(東京光学)、オリンパス35 I(高千穂光学)、1949年にDan35III(大和光機)が発売されたようです。このうち、ミニヨン35B、オリンパス35 I、Dan35IIIはレンズ一体型の目測カメラです。レンズ交換式レンジファインダーはMinolta-35 IA/IBとNikon I型のみです。もしニホン判のレンズ交換式レンジファインダーを手に入れようとするなら(そんな人がいるかどうかわかりませんが)、Nikon I型よりMinolta-35 IA/IBの方がずっと簡単でしょう。Nikon I型は製造数が少なくプレミアがついていて非常に入手しにくいカメラとなっています(Nikon I型の製造数は700台、Minolta-35 IA, IBの製造数は合わせて3000台。現在の価格はNikon I型は数百万円、Minolta-35は1万円〜です。製造数だけで、現在の価格にこれほど差がでるとは思いにくいですが、やはりニコン最初のカメラだからでしょうか)。

Minolta-35はM型ライカのように複数の焦点距離に対応したブライトフレームは持ち合わせてなく、ファインダーの視野が45mmのみの画角となっています。これはニホン判では50mmではなく45mmが標準焦点距離相当(ライカ判換算50mm)となり、 Minolta-35の標準レンズ Chiyoko SUPER ROKKOR 45mm/f2.8もニホン判用の標準焦点距離に合わせたためです。

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カメラの軍幹部にあるC. K. S.とは千代田光学精工の略で、ミノルタの前身の社名です。

このカメラの欠点はファインダーの倍率が0.33倍とコンパクトフィルムカメラのように狭く見やすいとは言い難いところと、エプロン部にある低速シャッターダイヤルに、ライカなどの一部のレンズのピントノブが干渉して装着できないということです。基線長は40mmでファインダー倍率が0.33なので有効基線長は13.2mmと、短いと言われているLeitz Minolta CLの18.9mmよりもさらに短いです。

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私の購入したMinolta-35は70年以上前のものとは思えないほどきれいで、シャッター速度も低速から高速までちゃんと変化して、写真を撮ることに関しては問題なく動作します。しかし、一点問題がありました。それは、フィルムを巻き戻す際にフィルムを噛ませる歯車のロックが外れないことです(上の写真の→RのレバーをR側にしてもロックが外れない)。写真を撮るときに巻く方向には回転するのですが、逆方向には回転せずパトローネにフィルムを巻き戻すことができません。そのため、フィルム巻き上げ時は暗室で蓋を開けて手動で巻くしかないのです。

レンズはMinolta-35の発売から10年後の1958年に発売されたMinolta-35ⅡB(今回購入したIBではない)とともに出たSUPER ROKKOR 5cm f1.8です。Minolta-35 I型には梅鉢と呼ばれるChiyoko SUPER ROKKOR 45mm f2.8があうのかもしれませんが、初代Summicron 50mm f2を超えることを目指し、それを超えたとも言われているSUPER ROKKOR 5cm f1.8を使ってみたかったので、このレンズを購入しました。60年以上前のレンズですが、評判通りの写りだったので、いつかレビューしようと思います。

以下、作例です。

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Minolta-35, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, 記録用カラーフィルム ISO100

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Minolta-35, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, 記録用カラーフィルム ISO100

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Minolta-35, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, 記録用カラーフィルム ISO100

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Minolta-35, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, 記録用カラーフィルム ISO100