Minolta-35 IIBは千代田光学精工のLマウントレンジファインダーMinolta-35シリーズの最終型です。Minolta-35 II型からIIB型への大きな改良点はファインダー倍率が0.7倍から0.8倍に、フィルムの巻上げがノブ式からレバー式に、フィルム１コマのサイズが24 x 36 mmのライカ判になったことです。
シャッター：横走り布幕 フォーカルプレーンシャッター
シャッタースピード：B ~ 1/500
ファインダー倍率：0.8倍
基線長：40mm（有効基線長：32mm）
フレーム：50mm
マウント：Lマウント
重量：600g (実測値)
サイズ：137 x 79 x 44 (W x H x D, 実測値）
発売日：1958年
その他の変更点はデザインです。低速と高速のシャッターダイヤルが黒塗りされ、巻上げレバーの中にフィルムカウンターが配置され、セルフタイマーのレバーの形状も変わりました。また、軍幹部にあるminolta-35やCHIYADA KOGAKUの書体が変更され、Minolta-35の頭文字Mが大文字から小文字のmになりました。さらに、赤色のペイントがところどころ（シャッタースピードを合わせる矢印やフィルムの位置を示す線など）に使われているところです。
このカメラの残念なところはファインダーです。I型、II型よりファインダー倍率は上がりましたが、あまり見やすくなっていません。ファインダー全視野で焦点距離50mm相当の視野と0.8倍というスペックだけ見ると、良さそうなファインダーに見えますが、実際は接眼部が小さく、安いコンパクトフィルムカメラのファインダーのような見にくさです。フィルムカメラではファインダーの大きさは記載されないようですが、現代のミラーレスのEVFだとcmや型でファインダーの大きさが記載されます（α7 iVは1.3cm/0.5型、α6400は1cm/0.39型）。もしEVFの大きさをMinolta-35のファインダーに当てはめるなら、この型がとても小さいのだと思います。
また全視野で焦点距離50mm相当のフレームを表しており、35mmや 105mmといったフレームはないので、50mm以外のレンズを使用する場合は外付けファインダーが必要になります。レンズの焦点距離によって自動的にフレームが切り替わる高度な機能が搭載されたライカM3やM4、それに追いつこうと手動でフレームを切り替えられるようにしたNikon SP、複数のフレームを常時表示し異なる焦点距離のレンズが使えるようにしたNikon S3やCanon Pに比べると、Minolta-35 IIBのファインダーはI型の発売からあまり進化していないと言えます。もちろんパララックス自動補正もありません。
Minolta-35 IIBが発売された1958年という年は、レンジファインダーから一眼レフに移行する、いわば一眼レフの黎明期で、Minoltaも含め日本のカメラメーカーは一眼レフの開発に力を入れていました。同年の10月、千代田光学精工からは初の一眼レフ SR-2が発売され、翌年の1959年には日本光学からNikon Fが発売された時期です。Minolta-35 IIBは１年未満で製造が打ち切られ、１万台未満しか製造されなかったようです。一眼レフの時代が来たから売れなかったというのもひとつの要因かもしれませんが、一方で1959年に発売された同じLマウントのレンジファインダーCanon Pはベストセラーになっているので、性能が他社のカメラに追いついていなかったのも売れなかった要因だったのではないでしょうか。戦後1947年、日本のカメラメーカーの中では先陣を切って発売されたレンジファインダーカメラのシリーズは、時代の変化について行けず取り残されて消えていきました。
以下、作例。
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
Minolta-35 IIB, SUPER ROKKOR 5cm f1.8, Fujicolor 100
