ニコンミュージアムではガラス張りのショーケース越しにしか見ることができなかったNikon F アイレベル、カメラ屋で実際に手に取ってみるとやはりかっこよかったです。カラーネガフィルムが終了するまえに(フィルム代がこれ以上高額になるまえに)使ってみたいと思い、結局、昨年の夏に某フリマサイトで購入しました。Nikon Fはニコンの一眼レフカメラの初代にあたり、レンズだけでなくファインダーも交換できるシステムカメラです。1959年から1974年まで販売されたロングセラー製品で、その間にパーツの変更や改良が加えられ、大きく前期、中期、後期に分類されるようです。私が購入したものは中期型でシリアルナンバーから1967年あたりに製造されたもののようです。
Nikon F アイレベルとNIKKOR-H・C Auto 50mm F2がセットになったものを買いました。NIKKOR-H・C Auto 50mm F2は1972年発売のレンズで、NIKKOR-H Auto 50mm F2(1964年発売)を多層コーティング化したものです。
Nikon F アイレベルとは三角屋根のアイレベルファインダーがついたNikon Fを指す呼称です。この三角屋根がNikon Fの一番の特徴です。個人的にはNikon F アイレベルが全ての一眼レフカメラの中で最もかっこいいカメラだと思います。
シャッタースピードはB - 1/1000、フィルムカウンターはフィルム交換時に裏蓋をあければ自動で復元されます。フィルムの枚数は20枚か36枚を選択できるようになっています。50年前は24枚どりではなく20枚どりのフィルムだったのでしょうか。フィルムの巻き上げは分割巻き上げが可能となっています。フィルム巻き戻し時はシャッターボタンの外側のリングをAからRにします。
接眼部の形は前期型は長方形でしたが、中期型から正方形に変更されています。
ボディ底面の左側にあるASAと書かれたリングはフィルム感度の指標です。露出計が内蔵されていない機械式のカメラなので、フィルム感度を設定しても自動で露出補正してくれるわけではありません。どの感度のフィルムを入れているかのメモとして使用します。
フィルム交換時は右側のつまみをOpen側に回します。そうすると裏蓋が完全に外れます。
シャッターはチタン幕横走りフォーカルプレーンシャッターです。
ファインダー接眼部の左のボタンを押し込めばファインダーが外れます。
ファインダーを外したところです。ファインダーは露出系が内蔵されたフォトミックファインダー(3種類)や二眼レフカメラと同じ形式のウエストレベルファインダー(3種類)、アイポイントが長く接眼部から離れても見やすいアクションファインダーがあります。
アイレベルファインダーの視野率は100%、倍率は0.7倍です。一眼レフの初期型とは思えないくらい見やすいファインダーです。フォーカススクリーン中央は、よくあるスプリットイメージタイプのものではなくマイクロプリズムとなっています。ピントがあっていないときはギラギラしたように見えます。
Nikon Fのシャッターボタンは後ろ側についています。これはレンジファインダーのNikon SP, S3と同じ設計になっており、先行して開発されたレンジファインダーと設計を同じにすることで一眼レフの開発を短縮したためのようです。
しかし、このシャッターボタンの配置は人差し指が変に曲げなければならないので、使いづらいです。多くのカメラはシャッターボタンがエルゴノミクス的に押しやすい前方(レンズに近いほう)に配置されています。
専用のソフトレリーズAR-1をシャッターボタンにつけることでボタンの高さが増し、人差し指を伸びた状態にすることができて押しやすくなります。
半世紀以上前のカメラですが、使っていて全く問題がないです。堅牢で質感が高く、ファインダーも見やすく、ヒット商品となったのが頷けます。そして、とにかくかっこいいです。Nikon F以上に造形美にこだわった一眼レフカメラはみたことがありません。ペンタ部のシャープな三角形はデザイナーの亀倉雄策氏がこだわったところらしく、とても美しく、Nikon Fの最も魅力的なところです。
このカメラを購入した直後、等々力渓谷を撮影した写真を載せます。